医療の基礎知識

医療保険制度の基本知識

国民健康保険

自営業者、フリーランス、無職の人などが加入する公的医療保険です。自治体が運営し、収入に応じて保険料が決まります。医療費の一部を国民健康保険が負担し、患者は自己負担分を支払います。

健康保険(社会保険)

企業に勤務する人やその家族が加入する医療保険で、保険料は雇用者と被雇用者の双方が負担します。健康保険組合や全国健康保険協会が運営し、医療費の一部を保険でカバーします。

後期高齢者医療制度

75歳以上の高齢者を対象にした医療保険制度で、一定の年齢以上の人が加入する義務があります。保険料は年金や収入に応じて決まり、国や地方自治体からの補助もあります。

高額療養費制度

月の医療費が高額になった場合に、自己負担額の上限を超えた分を払い戻す制度です。所得や年齢に応じて上限額が異なり、経済的な負担軽減が目的です。

療養費

保険適用外の治療を受けた際に、後で保険者に申請することで、一部の医療費が払い戻される制度です。急病などでのやむを得ない治療や、輸血、治療用装具の購入などが対象です。

医療扶助

生活保護を受給している人が、無料で必要な医療を受けられる制度です。費用は国や地方自治体が負担し、患者には負担がかかりません。

特定疾患療養管理料

高血圧症や糖尿病など厚生労働大臣が定める対象疾患を主病とする患者に対して治療計画を立て、療養上必要な管理を行った際に月2回算定できます。継続的な管理が必要な疾患の患者に対して、適切な治療と指導を行うことで、病状の悪化を防ぐことが目的です。

介護保険制度

高齢者の介護や支援が必要な場合に、公的なサービスを受けるための保険制度です。医療保険とは別に運営されており、40歳以上の人が保険料を負担しています。

診療報酬・請求

診療報酬

医療機関が患者の治療や診療行為を行った際に受け取る報酬で、保険者(健康保険組合など)が支払います。医療費請求の基礎となります。

診療報酬点数表

医療行為や診療内容ごとに定められた点数表で、診療報酬の基準として使用されます。これに基づいて医療機関が保険者に対し診療費を請求します。

レセプト(診療報酬明細書)

医療機関が保険診療を行った後に、保険者へ請求するための明細書です。患者ごとに診療内容や費用を記載し、保険者はその内容を審査して支払いを行います。

レセプトオンライン請求

レセプトを紙ではなく、電子データで保険者に提出する仕組みです。効率的で迅速な請求処理が可能になります。

包括払い(まるめ)

診療報酬を定額で支払う制度で、主にDPC方式が該当します。手術や病名に応じて、1日あたりの定額で医療機関に報酬が支払われます。

出来高払い

実際に行った医療行為に応じて報酬が支払われる方式です。行った診療内容に基づいて医療費が決定するため、提供した医療サービスの量が報酬に反映されます。

DPC(Diagnosis Procedure Combination)

入院患者の病名や治療内容に応じた診療費を決定する制度で、定額制の包括払いです。急性期の入院治療が対象となります。

施設基準

診療報酬を請求するために医療機関が満たすべき基準で、施設設備や人員配置に関する条件が定められています。

個別指導

適切な保険診療や診療報酬請求の妥当性を確認するため、医療機関に対して行われる指導です。必要に応じて指導や改善を求められることがあります。

患者負担・公費負担

自己負担割合

保険診療における患者の自己負担分の割合で、年齢や所得によって異なります(一般的に3割負担、子どもや高齢者は1~2割負担)。

公費負担医療

障害者医療、母子医療など、特定の条件に当てはまる場合に、全額または一部を公費で負担する制度です。国や自治体の補助を受けられるため、患者の経済的負担が軽減されます。

医療費助成制度

小児医療、母子医療、高齢者医療などの医療費を助成する制度で、自治体ごとに支援内容が異なります。患者が自己負担する医療費を一部または全額助成します。

傷病手当金

被保険者が病気やケガで働けなくなった際に、収入の一部を補う手当金です。主に健康保険に加入している人が対象です。

訪問診療

医師が患者の自宅を訪問して診療を行う在宅医療の一種で、通院が難しい患者が対象です。高齢者や身体に障害がある方の支援として行われます。

特定健康診査・特定保健指導

生活習慣病の予防や早期発見を目的とした健診と、それに基づく生活習慣の改善指導です。主に40歳以上が対象です。

開業医特有の用語

保険医

保険診療を行う資格を持つ医師で、保険医療機関の指定を受けている医療機関で診療を行います。保険制度に基づく診療報酬請求が可能です。

指定医療機関

特定の医療サービスや診療内容について、指定を受けた医療機関です。高額療養費や公費負担医療などを受けるための条件として指定されています。

医療広告ガイドライン

医療機関が広告する際のルールで、虚偽・誇大広告を禁止し、患者に正しい情報を提供することを目的としています。

診療所(クリニック)

外来診療を主に行う医療施設で、病床が19床以下もしくは、無床の小規模な施設です。通院患者に対する診療を中心に行います。

医療法人

法人化された医療機関の形態で、営利を目的とせず、地域医療への貢献を目的としています。法人化することで資金調達が容易になるなどの利点があります。

管理医師

医療法人やクリニックなどで、医療サービスの運営や管理責任を持つ医師です。医療の質や安全性の維持が求められます。

医療安全管理

医療事故やトラブルを防ぐための体制で、患者やスタッフの安全を守るためのリスク管理が重要です。

保険診療・自由診療関連

保険診療

健康保険適用の診療で、国が定める診療報酬点数に基づき行われます。患者は自己負担割合に応じた費用を支払い、残りは保険でカバーされます。保険診療の内容には制限があるため、標準的な治療が基本です。

自由診療

保険が適用されない診療で、患者が全額自己負担します。美容整形や最先端医療など、保険ではカバーされない治療が該当します。自由診療の費用設定は医療機関が自由に行えます。

先進医療

高度で最新の医療技術を使用した治療で、保険適用外です。厚生労働省が指定し、条件を満たす場合に保険診療と併用が認められます。がん治療のプロトン療法などが該当し、患者は先進医療部分を自己負担します。

混合診療

保険診療と自由診療を同時に行い、健康保険の範囲内の支払いは健康保険、範囲外の支払いは患者負担とすることで、日本では原則として禁止されています。先進医療など一部の治療で例外が認められています。保険診療に影響がない範囲で保険外診療を行うことが可能です。

差額ベッド料

病室の個室利用など、標準病室以外のベッドを使用する場合にかかる追加料金です。差額ベッド料は保険外で、患者が全額自己負担します。

医療費通知

保険者から被保険者に対し、医療機関で発生した医療費や診療内容を通知する制度です。医療費の適正化や不正防止、患者の医療利用の見直しを促します。

自己負担限度額認定証

高額療養費制度の対象者が利用する証明書で、医療機関窓口での自己負担を所得に応じた上限に抑えることができます。

経営・運営関連

医療経営

医療機関の運営や財務管理を指します。収益管理、経費削減、患者満足度向上など、安定した運営と質の高い医療提供が求められます。

診療予約システム

患者の診療予約やスケジュールを管理するシステムです。待ち時間の短縮やスムーズな診療を実現するために使用され、電話やインターネット予約が一般的です。

医薬品管理

診療所や薬局内での医薬品の在庫管理、品質管理、適正な使用の確保を指します。使用期限や保存方法など、患者への適正な供給が求められます。

地域医療連携

病院、診療所、介護施設などが協力して医療提供を行う仕組みです。紹介状や情報共有を通じて地域全体で患者を支援し、スムーズな転院や在宅療養支援が目的です。

医療廃棄物管理

使用済み注射器や薬品の容器など、医療行為で発生する廃棄物を適切に処理するための管理です。感染リスクや環境への配慮が求められ、厳しい基準のもと廃棄されます。

電子カルテ

患者の診療記録を電子データで管理するシステムで、紙カルテに代わり多くの医療機関で導入されています。データの検索や情報共有、検査システムや撮影装置等の外部機器との連携が容易になり、診療の効率化に貢献します。

その他の制度・トレンド等

産業医

企業内で従業員の健康管理を行う医師で、主に大企業に配置されています。健康診断や職場環境の改善指導、過重労働による健康被害防止などが業務です。

かかりつけ医制度

患者が自分の主治医を決め、日常的な健康管理や慢性疾患の管理を受ける制度です。かかりつけ医は患者の健康情報を把握しており、必要に応じて他の専門医に紹介します。

医療ツーリズム

他国で医療を受ける目的で旅行を行うことです。日本の高度な医療技術や治療水準を求めて訪れる外国人患者も増えています。特に美容医療や最先端治療が人気です。

医療クレーム

医療費や診療内容に対する患者の不満や苦情です。適切に対応しなければ評判の悪化や法的問題に発展する可能性があるため、丁寧な対応が求められます。

医療観察制度

心神喪失等の状態で重大な刑事責任を問われる行為を行った場合、再発防止のための医療を行う制度です。治療と社会復帰支援の両方を提供することが目的です。

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