電子カルテ
クリニック向け電子カルテ【レセコン一体型 vs レセコン分離型(ORCA等)】メリット・デメリットを徹底比較!
2024.11.29
クリニック運営の効率化や患者満足度の向上には、電子カルテの導入が欠かせません。しかし、電子カルテ選定を始めると「オンプレミス型(院内サーバー設置型)」「クラウド型」という提供形式の違いや、「レセコン一体型」「レセコン分離型」というシステムの構成での区分けがあり、その違いを理解するだけでも手間がかかります。本記事では、「レセコン一体型」と「レセコン連携型」の2つの主要な電子カルテのタイプについて、その違いやメリット・デメリットを分かりやすく解説します。自院に必要な電子カルテの選定にお役立てください。

目次
そもそもレセコンとは?
レセコンの役割
レセコン(=レセプトコンピューター)は、窓口会計および保険算定や請求を行うための診療報酬請求明細書(レセプト)の作成・管理を行うためのシステムです。「医療事務コンピューター」「医事コン」といった呼び方をされることもあります。
保険診療を行っている医療機関では、診療行為や処方に基づき保険点数を算定し、患者の負担割合に応じて自己負担金を窓口で支払ってもらいます。残りの保険者負担分については、1カ月分をまとめて審査支払機関にレセプトを提出し、審査後に支払いを受取ります。レセコンを導入することで、保険点数の自動計算、記入データに誤りがないかの点検作業等。効率的にミスや返戻を減らして行うことができます。
レセコンはほぼすべてのクリニックで利用されている
社会保険診療報酬支払基金によると令和5年7月現在で99.4%とほぼすべてのクリニックで導入されていることが分かります。※1
レセコン一体型電子カルテとは?運用のシンプルさが魅力
レセコン一体型の電子カルテは、電子カルテとレセコン機能が1つのシステムに統合されています。これにより、データの一元管理が可能となり、2つのシステムのインターフェースも統一されているため操作が覚えやすくシンプルな運用が実現します。
レセコン一体型カルテの中でもさらにオンプレミス型(院内サーバー設置型)、クラウド型に分けることができますので、それぞれについて特長を解説していきます。
クラウド型のレセコン一体型電子カルテ
まずはクラウドサーバー上で稼働するレセコン一体型カルテの特長をご紹介します。
こんなクリニックにおすすめ!
導入・運用のコストを抑えて、できる限り手軽に導入したい小規模クリニックにおすすめです。ITリテラシーの高くないスタッフが多くても運用できる点も特徴です。
特長
初期コスト | ◎ | サーバー導入が不要なのでコストを抑えて導入ができます。 |
運用コスト | 〇 | 毎月の利用料がかかります。 |
セキュリティ | △ | 提供ベンダー側のセキュリティ体制に左右されます。 インターネット回線の不良時には利用が制限される可能性があります。 |
運用難易度 | ◎ | 診療法改正などシステム更新をベンダーに一任できます。 また、システム一体型のため、データをカルテとレセコンの双方のシステムにおいてそれぞれで管理する必要がありません。 |
構成の柔軟性 | △ | 電子カルテとレセコンを個別に選ぶことはできません。 |
サポート | △ | 電話やチャット等で遠隔の対応の製品が多いです。 |
障害対応の難易度 | ◎ | ベンダーに一任できます。 |
クラウド型レセコン一体型電子カルテ製品の一例
- MAPs for CLINIC(株式会社EMシステムズ)
クラウドの弱点「インターネット停止」時もオフラインで利用継続!従来のクラウド型では難しい柔軟なカスタマイズで操作を効率化し、4倍速の高速入力!安心と便利の両立で日々の診療を支えます。また、対面でのサポート対応も可能で安心して導入いただけます。
公式ページ
- エススリーデジカル(エムスリーデジカル株式会社)
シンプルな操作性とスマートなデザインが特徴。オンライン診療との連携やレセコン機能を一体化し、クリニック業務を効率化します。サポート体制も充実
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- CLINICSカルテ(株式会社メドレー)
クラウド型でオンライン診療機能を標準搭載し、予約や決済もスムーズに連携可能。シンプルな画面設計で操作性が高く、ITスキルに不安のあるスタッフでも扱いやすい設計です。
公式ページ
- BrainBoxCloud(ユヤマ製作所)
電子カルテ、レセコン、院内調剤を一体化したオンプレ型のシステム。高い信頼性とカスタマイズ性があり、多くの診療科で活用可能。医療機関専用設計で業務効率を最大化できます。
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- HOPE LifeMark-SX-Cloud(富士通)
直感的な操作性で初心者にも使いやすく、リアルタイム入力支援機能で業務の正確性を向上。クラウド基盤でどこからでもアクセス可能な、効率的な運用を実現する電子カルテです。
公式ページ
オンプレ型のレセコン一体型電子カルテ
次に院内に設置したサーバー上で稼働するレセコン一体型カルテの特長をご紹介します。
こんなクリニックにおすすめ!
電子カルテに「セキュリティや安定性」「多機能やカスタマイズ」を求めており、IT管理にリソースを割くことのできるクリニックにおすすめです。
特長
初期コスト | △ | 高額なサーバーの購入が必要です、院内に置き場所も確保する必要があります。 |
運用コスト | △ | サーバーにもシステムにも維持費がかかります。 |
セキュリティ | ◎ | データが院内管理できるため、外部からの不正アクセスリスクが少ないです。 またインターネット回線に左右されず安定して稼働できます。 |
運用難易度 | △ | 院内サーバー、システムのメンテナンスには自身での対処が必要です。 また、ウイルス対策、データのバックアップ等の管理も自身で行う必要があります。 |
構成の柔軟性 | △ | 電子カルテとレセコンを個別に選ぶことはできません。 |
サポート | ◎ | 電話やチャット等で遠隔の対応の製品が多いです。 |
障害対応の難易度 | △ | サーバーのトラブルには自身で対応する必要があります。 |
オンプレ型レセコン一体型電子カルテ製品の一例
- HOPE LifeMark-SX(富士通)
オンプレ型の電子カルテで、優れたカスタマイズ性と拡張性を備え、診療科やクリニックの規模に応じた柔軟な運用が可能。操作性にも優れ、長年の実績が信頼性を保証します。
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- Medicom-HRf(ウィーメックス株式会社)
ハイブリッドクラウド型の電子カルテで、院内外からのアクセスをサポート。高い信頼性とセキュリティを確保し、診療所に最適な柔軟なシステム設計を提供します。
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- BrainBoxV-Ⅳ(ユヤマ製作所)
電子カルテ、レセコン、調剤機能を統合したオンプレ型システム。特に院内調剤が必要な診療所向けに設計され、業務効率を大幅に向上させます。
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- ダイナミクス(株式会社ダイナミクス)
オンプレ型電子カルテで、シンプルな操作性と充実したサポート体制が特徴。中小規模のクリニックに特化した高コストパフォーマンスのシステムを提供します。
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レセコン分離型電子カルテとは?自由度の高い運用が魅力
レセコン分離型電子カルテは、日本医師会が提供する無料のレセコン「ORCA」等のレセプトコンピューターと、電子カルテを組み合わせて運用します。それぞれのシステムを自由に選定することが可能で、自院の目指す運用に合わせて自由に構築することができます。こちらもクラウド型とオンプレ型それぞれの特長について説明してきます。
「クラウド型」のレセコン分離型電子カルテ
こんなクリニックにおすすめ!
「現在利用しているORCAのレセコンを継続利用したい」といった理由や、複数の診療科に対応するために「レセコンの運用や機能」にこだわりがある、かつ電子カルテの導入費用を安く抑えたい医療機関におすすめです。
特長
初期コスト | ◎ | サーバー導入が不要なのでコストを抑えて導入ができます。 レセコンはORCA等無料の物を選ぶとよりコストを下げることができます。 |
運用コスト | 〇 | 毎月の利用料がかかります。 |
セキュリティ | △ | 提供ベンダー側のセキュリティ体制に左右されます。 インターネット回線の不良時には利用が制限される可能性があります。 |
運用難易度 | △ | それぞれのシステムの操作を覚える必要があり、システム間でのデータの送信も必要になるため、 一体型カルテに比べて手間が多くなります。 |
構成の柔軟性 | ◎ | 自社の運用に合わせてカルテとレセコンを選んで組み合わせられます |
サポート | △ | 電話やチャット等で遠隔の対応の製品が多いです。 |
障害対応の難易度 | △ | カルテの障害はベンダーに一任できますが、ユーザー側で障害の原因の切り分けが必要になります。 また、カルテとレセコンで別の問い合わせ窓口に問い合わせる必要があります。 |
クラウド型レセコン分離電子カルテ製品の一例
- MAPs for CLINIC with ORCA(株式会社EMシステムズ)
クラウドの弱点「インターネット停止」時もオフラインで利用継続!従来のクラウド型では難しい柔軟なカスタマイズで操作を効率化し、4倍速の高速入力!安心と便利の両立で日々の診療を支えます。また、対面でのサポート対応も可能で安心して導入いただけます。
公式ページ
- エムスリーデジカル(エムスリーデジカル株式会社)
直感的操作が特徴のクラウド型電子カルテです。モバイル対応や簡単なシステム導入で、診療効率の向上と手厚いサポートを実現します。
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- CLIUS(株式会社Donuts)
スマートデバイスに対応したクラウド型カルテです。シンプルなデザインで操作性抜群、予約やオンライン診療機能も統合しており一括で対応できます。
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- きりんカルテ(ウィーメックス株式会社)
小規模クリニック向けに最適化された簡易型クラウドカルテです。コストパフォーマンスに優れ、診療所のニーズに柔軟対応可能です。
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オンプレ型のレセコン分離型電子カルテ
こんなクリニックにおすすめ!
「現在に利用しているレセコンを継続利用したい」といった理由や、複数の診療科に対応するために「レセコンの運用や機能」にこだわりがありあるかつ電子カルテのセキュリティや安定性、多機能やカスタマイズ性を求めているクリニックにおすすめです。一方でITスキルや管理の工数が求められる点には注意が必要です。
特長
初期コスト | △ | 高額なサーバーの購入が必要です、院内に置き場所も確保する必要があります。 レセコンにはORCA等無料の選択肢もあります。 |
運用コスト | △ | サーバーにもシステムにも維持費がかかります。 |
セキュリティ | ◎ | データが院内管理できるため、外部からの不正アクセスリスクが少ないです。 またインターネット回線に左右されず安定して稼働できます。 |
運用難易度 | △ | システム間でのデータのやり取りやそれぞれの操作を覚える必要があるのに加えて 院内サーバー、システムのメンテナンスには自身での対処が必要です。 また、ウイルス対策、データのバックアップ等の管理も自身で行う必要があります。 |
構成の柔軟性 | ◎ | 自院の運用に合わせて自由にレセコンを選ぶことができます。 |
サポート | ◎ | 現場で対応してくれる製品が多いです。 |
障害対応の難易度 | △ | 障害原因の切り分けやサーバーのトラブルには自身で対応する必要があります。 また、カルテとレセコンで別の問い合わせ窓口に問い合わせる必要があります。 |
オンプレ型レセコン分離電子カルテ製品の一例
- Dr.Simpty for ORCA(三栄メディシス株式会社)
ORCAとの連携が可能なレセコン分離型の電子カルテです。操作がシンプルで、ユーザーインターフェースも直感的に使えるのが特徴です。また、診療支援機能や業務効率化ツールも搭載されています。
公式ページ
まとめ
ここまでレセコン一体型とORCA連携型の、それぞれにメリット・デメリットを説明してきましたが、あくまでおおよその区分けであって製品によって細かく特長が分かれているというのが実際のところです。選定前に必ずベンダーに問い合わせをして相談やデモの試用を通じて、自院に最適なシステムを選びましょう。可能であれば実際に利用している医師に話を聞いてみるのも良いでしょう。
EMシステムズでは「MAPs for CLINIC(マップスフォークリニック)」というクラウド電子カルテを提供しております。「レセコン一体型タイプ」と「レセコン分離型タイプ(ORCA連携)」の両形態を提供しており、それぞれのメリット・デメリットやどちらのタイプがお客様に向いているか含めてご相談承れますので、どうぞこちらよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
この記事を書いたライター

氏名 株式会社EMシステムズ
1980年創業の医療(クリニック・保険薬局)、介護/福祉業界向けのシステム開発・販売・保守を行う企業です。現在は北海道から沖縄まで、多くの全国の医療・介護施設様に当社の各種システムをご利用いただいております。
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