電子カルテ
SOAPの基本と書き方:正確な情報共有の鍵となるカルテの書き方
2025.01.16
患者の診療情報を整理し、一貫性を持たせた記録を行うための「SOAP形式」。医療現場での実用性が高いこのフォーマットは、診療の質を向上させるだけでなく、チーム医療を円滑に進めるためにも欠かせません。本記事では、SOAPの各要素をわかりやすく解説し、記載時のポイントや注意点、電子カルテとの連携による効率化の方法を詳しくご紹介します。SOAP形式を正しく活用し、患者中心の医療を実現しましょう。

目次
SOAPの基本構成と記載内容
SOAPとは何か?その基本概念
SOAPは、看護記録の形式として広く採用されているフォーマットであり、患者の診療情報を効率的かつ正確に整理するための枠組みです。このフォーマットは、医療現場において一貫性を保ちながら情報を記録し、共有するのに非常に効果的です。SOAPは以下の4つの要素で構成されています。
1.Subjective(主観的情報):患者の主訴や症状
患者が訴える症状や感覚を記載します。具体的には、患者の言葉をそのまま引用する形で記録することが重要です。
例:「昨日から頭痛が続いている」「胸が締め付けられるような痛みがある」など。この主観的情報は、患者の経験を理解し、治療方針を立てる上で不可欠な要素です。
2.Objective(客観的情報):診察や検査結果
診察や検査で得られた客観的なデータを記録します。バイタルサイン(血圧、体温など)や画像検査、血液検査の結果が該当します。
例:「血圧140/90mmHg、体温37.5°C、心電図異常なし」など。これらのデータは、主観的情報と組み合わせることで、より正確な診断を可能にします。
3.Assessment(評価):診断や問題点の分析
主観的情報と客観的情報をもとに、患者の状態を分析し、診断や問題点を記載します。
例:「高血圧の疑い」「ウイルス性咽頭炎の可能性」など。この段階では、情報を整理し、治療計画に向けた明確な方向性を示すことが求められます。
4.Plan(計画):治療方針や次回の対応
今後の治療方針や、診療スケジュールを記載します。
例:「降圧薬の開始」「1週間後に再診、咽頭培養検査を実施予定」など。計画は具体的かつ実行可能なものである必要があり、患者との協力を促進することが求められます。
SOAPの各項目の記載ポイント
症例別の記載(例:高血圧患者、腰痛患者)
- 高血圧患者の場合:
- Subjective:「特に症状はない」
- Objective:「血圧150/95mmHg、心音正常」
- Assessment:「高血圧症コントロール不良」
- Plan:「降圧薬の増量、減塩食の指導」
- 腰痛患者の場合:
- Subjective:「1週間前から腰の痛みが続いている」
- Objective:「腰部に圧痛あり、動作時の可動域制限」
- Assessment:「筋筋膜性腰痛の可能性」
- Plan:「鎮痛薬の処方、理学療法の開始」
記載時の注意点(情報の漏れを防ぐポイント)
- 患者の主訴は患者の言葉を正確に記録。
- 客観的データは定量的に記載。
- 診断や治療計画は明確かつ簡潔に表現。
SOAPでカルテを書く際の具体的なコツ

情報を簡潔かつ正確に記載する方法
記録は要点を整理し、簡潔な内容あることが重要ですが、過剰な省略は誤解を招く可能性があります。患者の状態や診断に関して、必要な情報は漏らさず記載しましょう。記載内容は短いながらも本質を捉え、適切にまとめるスキルが求められます。
見やすいフォーマットを活用した記録の工夫
SOAP形式を意識して、各セクションを明確に区別して記載することで、他の医療従事者が迅速に内容を把握できるようにします。例えば、各項目を箇条書きにすることも有効です。フォーマットを統一することで、情報の検索性が向上し、チーム全体での効率が高まります。
記載ミスを防ぐためのダブルチェックの重要性
カルテ記載後は、必ずダブルチェックを行い、記載ミスや重要情報の漏れがないか確認しましょう。特に、薬剤の処方や次回の診療計画の記載ミスは、患者の安全に直結するため注意が必要です。ペアレビューや電子カルテのエラーチェック機能を活用することで、人的ミスを最小限に抑えることができます。
既往歴や家族歴の扱い方と書き込み範囲
既往歴や家族歴は、AssessmentやPlanに関連する場合に記載します。不要な情報を記載すると内容が混乱するため、適切な範囲に留めることが大切です。例えば、患者の主訴や診断に直接関係のない情報は控え、関連性の高い事実のみを記載します。
SOAPの活用法と医療現場でのメリット
チーム医療におけるSOAPの役割
医師、看護師、コメディカル間の円滑な情報共有
SOAP形式は、異なる職種間での情報共有を円滑にし、診療の一貫性を保つ手助けとなります。この形式を活用することで、医療従事者全員が患者の状況を正確に把握しやすくなります。
チーム全体での患者ケア向上
継続性のある一貫した形の記録の集積により、患者の状態を全員が正確に把握できるため、より効果的なケアが可能になります。例えば、複数の診療科が連携して治療を行う場合でも、SOAP形式の記録があることで情報共有がスムーズに進みます。
患者中心の医療を実現するSOAPカルテの活用方法
診療経過の一貫性を保つ
SOAP形式は診療の流れを一貫して記録できるため、診療経過の透明性が向上します。この一貫性により、患者が複数の医療機関を利用する際にも情報の断絶を防ぐことができます。
患者の自己管理を促進する記録の工夫
患者が自身の病状や治療内容を理解しやすくなるよう、わかりやすい記録を心掛けることで、患者の自己管理能力を高めることができます。例えば、患者が自宅でのケアを行う際、SOAP記録を活用して適切な対応を行う助けになります。
電子カルテとの連携ポイント
電子カルテへの記載時に注意すべき点
SOAP形式を維持しながら記録する方法
電子カルテでもSOAP形式を基本にし、テンプレートを活用することで記載の一貫性を保つことができます。統一されたフォーマットは、情報検索や分析を行う際にも非常に便利です。
電子カルテのテンプレート活用とその利便性
電子カルテのテンプレートを活用することで、記録の効率化が図れます。また、SOAP形式に沿った項目を設定することで、記録ミスを減らすことができます。さらに、テンプレートのカスタマイズにより、診療科や医療機関の特性に合った記録方法を構築できます。
システム導入でSOAPを活用するメリット
記録の標準化と効率化
SOAP形式を標準化することで、記録の質を一定に保ちながら効率化を図れます。これにより、医療現場の情報授受の精度が上がり、対応力や生産性が向上します。
データ分析やレポート作成での利活用
電子カルテを活用したSOAP形式の記録は、データ分析やレポート作成にも役立ちます。患者の傾向や治療効果を可視化しやすくなり、診療の改善に繋がります。
学生・研修医向け:SOAPカルテ記載のポイント
初めてSOAPを書く際の注意点
SOAPの各項目の目的を理解し、簡潔かつ正確に記載することを心掛けましょう。初めての場合は、上司や指導医の指導を受けながら練習してください。基本を抑えることで、実際の診療現場での応用がスムーズになります。
よくある失敗事例と改善策
- 失敗例:主観的情報と客観的情報を混同する。
- 改善策:患者の言葉(Subjective)と検査結果(Objective)を明確に区別する。
- 失敗例:記録が詳細すぎて読みにくい。
- 改善策:簡潔な文章と箇条書きを心掛ける。
実習中や研修での効果的な練習方法
実習中は、日々の診療でSOAP形式を意識し、指導医からフィードバックを受けることでスキルを磨きましょう。また、模擬患者を使ったシミュレーションも効果的です。
まとめ
SOAPは正確な情報共有と診療の質向上に欠かせない記録形式です。基本概念を理解し、正しい記載方法を身につけることで、患者中心の医療やチーム医療において大きなメリットをもたらします。電子カルテとの連携や継続的な学習を通じて、SOAP形式をさらに効果的に活用しましょう。
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この記事を書いたライター

氏名 株式会社EMシステムズ
1980年創業の医療(クリニック・保険薬局)、介護/福祉業界向けのシステム開発・販売・保守を行う企業です。現在は北海道から沖縄まで、多くの全国の医療・介護施設様に当社の各種システムをご利用いただいております。
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